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雪光風火

天降ります 遠津御祖の神奈備に 今様神樂響き渡りぬ―
10月末、やしろで催した新曲完成披露コンサート。それを祝い、富山県内のある神社宮司が寄せた一首である。氏は最前列で鑑賞し、「素晴らしい曲だ」を連発した。

曲は「櫛田神社の四季 組曲雪光風火 ~ステンドグラスに映える神在杜~」(中原達彦作曲)。演奏はヴァイオリニスト大迫淳英氏が担当した。大迫氏は音旅演出家として東急のTHE ROYAL EXPRESSのテーマ曲をプロデュース。これまでにもJR九州「ななつ星in九州」など多くの音楽演出を手掛けている。世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」をテーマにした音楽物語「祈りの島」などの優れた演奏でも名高い。よくコンビを組む中原氏とともに気鋭の音楽家である。

やしろは、台風との戦いの歴史を繰り返してきた。何度となく数十本、数百本の大木が倒れ、下敷きになった建造物にも大きな被害が出た。直近は平成16年10月。無残な姿に変わり果てた境内の光景が記憶に残る。いまにも倒れそうな危険な杉を処分し、落葉樹を植えた。10数年経って、森は落ち着いてきた。「美しい鎮守の森を残したい」。その願いが組曲へと駆り立てたのである。

曲はピアノが奏でる太鼓の音で始まる。雪の中、1年の息災を祈る初詣、光を浴びて生命を燃やす若葉、風に鳴る風鈴と戯れる参拝者、神輿や獅子が火の中を疾走する秋祭り。境内に併設されているステンドグラス美術館の色とりどりのガラスに映る、刻一刻姿を変える森や季節ごとの情景をヴァイオリンとピアノとチェロが鮮やかに描き出す。美しく刺激的なメロディーは、神さまを称える曲にふさわしい。

クラシック音楽を身近に、しかも自分たちの氏神様がテーマの新曲を聴いた氏子たちから感嘆の声が上がった。県外から聴きにきた人もいた。素晴らしい装丁のCDも出来上がった。少しでも多くの人に聴いてもらいたいと、待合室に音響設備も計画中だ。

「今様神樂」は、氏子みんなが神さまと森を守る決意を再確認する大きなきっかけとなった。


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